2008年12月25日 (木)

入試問題から学校を探る 算数の問題にみる吉祥女子中学校の教育理念

数多ある女子校の中で、御三家に次ぐ進学校としての地位を不動のものとしつつある吉祥女子中学校。

2008年春の現役生だけの合格実績を見ると、東大2名をはじめとして国立大学に30名、早稲田42名、慶応23名、上智17名を含めた私大への合格者は実に787名を数える。さらに、このうち医科、歯科、薬科大学へは国立、私立を合わせて34名の合格者を輩出した。当然複数合格もあるが214名の卒業生数に対しての数字であることを考えると立派というほかない。また、同校には芸術コースも設置されており、こちらも卒業生40名に対して、芸大、音大への合格者は57名だ。これらの数字だけを見ても、生徒の中にある、あらゆる可能性を引き出し、育て上げていることは否定の余地がない。

そんな同校の入試問題の中から、2月1日の算数の問題を取り上げてみた。

P25

掲載した問題をご覧いただければ分かるとおり、何の変哲もない商と余りと約数に関する問題だ。上位校を目指してきた受験生であれば、何度となく演習してきたことであろう。ただ単に答えを出すということに関しては何の苦もない問題なのだが、ここで敢えて取り上げたのには理由がある。まずは囲みの部分を見ていただきたい。ここに書かれているのは、この問題を解くにあたっての考える手順だ。一見するとヒントのように見えるが、実は問題の構造そのものについて書かれているのだ。これを読んで、頭の中だけで理解しようとするのは少しばかり難儀なことかもしれない。実際にここに書かれた順番の通りにリンゴとミカンの絵を描いて考えてみると理解できるものと思う。③の段で言っていることは、元々同じ余りがでるのだから、ミカンの余りからリンゴの余りを取り除いて、余りの部分を確定してしまえば、残りのミカンは子どもにちょうど配れる個数になるということだ。ここで、もう一度①、②と振り返ってみると、③の作業は元々あったリンゴとミカンの総数の差をとることと同じであることが分かるだろう。ここに吉祥女子で展開されている数学の授業が垣間見られると言ったら飛躍を感じるだろうか。算数では、そのほとんどのことを具体量を用いて考え、理解していくのに対して、数学では抽象的な数の操作に歩を進めることになる。ここに数学での躓きの大きな要因があるのだが、どんな数を扱うにしろ本質の理解が不可欠であることに変わりはない。速さの三公式が理解できずに方程式は立てられないのだ。この囲みの部分には、きちんと本質を捉えさせた上で数学の世界へと誘う意識が感じられるのだ。卒業生の15%が医歯薬系に合格している現状と合わせて考えると、確固たる基礎を築いた上で柔軟な思考力を養うような授業が展開されているのだろうという推察ができるのではなかろうか。

【初出:NettyLandかわら版2008年11月号】
(藤崎 正彦)

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スポーツに読むヒント

世界中を沸かせた北京オリンピックが終わり、プロ野球も終盤を迎えた10月、大手書店ではスポーツ関係の書籍が新書・文庫化されたものが目立つ。今回は3冊の本を紹介したい。

Kitajima2_2 『〈勝負脳〉の鍛え方』は、脳外科医で、救命救急患者の治療でも画期的な治療法を開発してきたという著者の林成之氏が、オリンピックやプロスポーツでトップレベルの活躍をする選手の脳の働きに触れ、「勝負脳」の鍛え方や「頭がよくなる秘訣」を紹介している

ここでは記憶を強くする方法に始まり、覚えたことをパフォーマンスする知能、つまり「表現知能(表現する多重知能の能力)」にも触れ、スポーツや受験、ビジネスなど、あらゆる勝負で勝つための能力を鍛える必要性と、この「勝負脳」を自分のものにするコツが述べられている。スポーツが好きな受験生や保護者にとっても、中学受験の励みやヒントになる内容がある。

Hushimi2_3 『気づかせて動かす~熱情と理のマネジメント~』は、かつて伏見工業高校ラグビー部監督として同校を全国大会に導き、TVドラマ『スクール・ウォーズ』のモデルや「プロジェクトX」の登場人物ともなった山口良治氏と、山口監督が率いて伏見工業が初めて全国制覇を果たした時のキャプテンで、後に日本代表チームの監督も務めた平尾誠二氏による対談をまとめたもの。

大切なのは何より生徒を信じること、人が自分を変えることができるのは「気づき」によること、などについて両氏は触れ、スポーツの意義について「自分の可能性に挑戦できる、その結果をいつも自分のものとして受け止めることができるという意味で、すごく教育的な価値があると思う」(山口氏)、「スポーツの教育的価値とは、ひと言でいったら、『できなかったことができるようになる』ことだとぼくは思います。しかも、自らの意思で、自らの努力でそれを勝ち取ることができる」(平尾氏)と結んでいる。これから志望の中学に合格~入学し、スポーツをしてみたいと考える子どもたちにも伝えたいメッセージが含まれる一冊だ。

Kanemoto2_2 『覚悟のすすめ』は、阪神タイガース外野手で、この2008年に400本塁打、2000本安打を達成して名球界入り、今シーズンも連続フルイニング出場記録を更新した鉄人「アニキ・金本」の初著書。今シーズンも最後まで優勝の期待と話題を撒いた阪神タイガースで、40歳にしてリーダーシップをとる金本選手の、プロスポーツ選手としての“覚悟”が淡々と述べられている。これは中学受験生には直接は関係ない内容かもしれないが、やはり阪神は面白いし、金本選手は頼もしい。個人的にはとても面白く読めた。

Kanemoto01_2これらの本に共通して述べられているのは、受験や勉強についても、スポーツから学べる貴重なヒントがあることと、スポーツが人をいろいろな面で成長させてくれるものであることだ。

中学受験生の諸君にも、この先の中高6年間でそういうスポーツの楽しさに実際に触れて、健やかに大きく成長していってほしいと思う。

【初出:NettyLandかわら版2008年11月号】
(北 一成)

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2008年12月 5日 (金)

入試問題から学校を探る 理科の問題にみる学習院女子中等科の教育理念

学習院女子中等科は卒業生の約7割は学習院大学へと進学するが、その影で他大学への合格実績を着実に伸ばしているのをご存知だろうか。2008年春の他大学への現役合格者数は東大2名を含め国立大学が10名、早稲田、慶応、上智の合計39名をはじめとした私大の合格者数が合計146名となっている。単純に卒業生数を分母とした他大学への合格率は実に85%にも上る。あまり取り上げられることはないが、立派な進学校なのだ。その内訳も医科大、薬科大等の理系から、音大、美大等の芸術系まで多岐にわたる。これは、自主性を重んじ、自分の頭で考え行動できる女性を育てることを進路指導においても徹底していることの証であろう。

P17 さて、今回取り上げた問題の素材はメダカという慣れ親しんだものだが、教科書的な知識にとどまらず、自分の頭を使って考えることを要求している。問題文の第1段落は食物連鎖の問題だが、大きな魚や鳥以外のメダカの天敵が2つ、すぐ思いつくだろうか。水辺の生き物の生態をじっくりと思い起こしてみて、やっとザリガニやヤゴ、タガメといった水生昆虫が浮かんでくる。しかし、これさえも実体験があるからこそであり、ヤゴやタガメなど見たこともない受験生の方が圧倒的に多いのではなかろうか。そうであれば、あとは持てる知識を総動員して自分の頭で考えてひねり出していくしかないのである。そのためには、普段から様々なことに興味、関心を持ち、身の回りに起きる現象を観察したり、自ら調べたり、考えたりということがどうしても必要となる。

第2、第3段落ではメダカとヒトのからだのつくりを比較している。メダカの5種類のひれのうち、ヒトの手と足に相当する部分を答えさせているのだが、ここでもなぜそのように考えたのかを記述しなければならない。さらに第4段落ではメダカが絶滅危惧種に指定されたことを取り上げているのだが、ここではメダカが減少した主な原因を2つ記述しなければならない。絶滅危惧種自体は聞きなれた言葉であるが、ここでも単語として知っているだけでよい訳ではなく、何故絶滅の危機に瀕しているのかということを一歩進めて考えておくことが必要だ。環境問題が様々に取り上げられる昨今、生活の場を失っている生物が多いことや、外来種に駆逐されていく生物について見聞きする機会は少なくないはずで、やはり社会現象や自然科学に対する自発的な学習姿勢が求められているのだ。

「自ら学習に励むこと」を大切にすることが「その時代に生きる女性にふさわしい品性、知性を身につけること」の根幹であると言えよう。

【初出:NettyLandかわら版2008年10月号】
(藤崎 正彦)

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クラブの継続と大学受験 高3の夏~冬までスポーツに励み、大学受験に挑む中高一貫生

Sports01

この夏は、北京オリンピックの話題で世界が沸いたが、国内でも各地で中学生・高校生によるさまざまなスポーツの大会が行われた。埼玉で行われた「全国高校体育大会(インターハイ)」は、今年も“夏の風物詩”として、高校生らしい熱戦を見せてくれた

ところで高校生のスポーツの大会は、だいたいの競技(種目)で、この夏のインターハイが大きな目標となっており、夏休み前の6~7月にかけては、この全国大会の出場権をかけて、各都道府県で予選大会が行われる。

私立の進学校の運動部には、高2の夏や秋の時点で、いわゆる現役選手を引退し、1年数ヶ月後の大学受験に備えるケースもある。それは各学校やクラブの方針によるものだ。しかし最近の様子を見ていると、多くの競技で高3の夏まで活動を続けている進学校が、以前より多くなったように思える。

そしてそれは、好きでそのクラブ活動を続けている生徒にとって、大学受験に向けた勉強をするうえでも、かえってプラスになるという私学の先生は多い。勉強とクラブ活動をきちんと両立するためには、体力はもとより、意思力、集中力、気持ちの切り替えの早さ、上手な時間の使い方などが必要になるからで、しかもそうした力は、大学受験だけでなく、その先の人生でも役に立つ力となるからだ。

なかには、夏休みを終えても、まだ現役を引退せずに、その上の大会をめざす高校3年生がいるクラブもある。冬に重要な(高校生最後の)全国大会がある、サッカーやラグビー、バスケット、陸上などの競技である。東京では国学院大学久我山や世田谷学園、暁星、本郷、城北、神奈川では桐蔭学園や桐光学園などが、こうしたウィンタースポーツの強豪校で、そのクラブの高校3年の選手たちは、すでに大学受験勉強のスパートに入っている友人たちを横目に、真冬の全国大会をめざして、この時期にもまだ練習を続けている。当然、彼らの保護者には大学進学についての心配もあることだろう。

しかしほとんどの場合、こうして高校生活の最後まで、好きなスポーツでがんばり抜いた選手たちは、大学受験・進学も、うまく成功させていることが多いという。なかには6年間一緒のクラブに打ち込んできた友人も多く、やはり同じ大学進学の目標を持つチームメイトとともに励ましあい、ときには競い合って勉強にも打ち込む関係が、彼らの励みになっているに違いない。また、同じように最後までがんばって大学に進学したクラブの先輩たちから、励ましやアドバイスをもらえることも大きな力になる。

両立は大変かもしれないが、高校生活の最後まで、そんな充実したクラブ活動を続けられることも、私立中高一貫校の大きな魅力ではないかと思う。

この夏までクラブを続けた多くの高校3年生も、もちろん立派だったが、さらに9月以降も現役選手としてスポーツに打ち込む私立中高一貫校の高校3年生全員の、めざす大会での健闘を祈るとともに、大学受験・進学の面でも成功を願いたい。

【初出:NettyLandかわら版2008年10月号】
(北 一成)

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2008年9月30日 (火)

入試問題から学校を探る 社会の問題にみる光塩女子学院の教育理念

2008年春の現役合格者数は早稲田、慶応、上智が52名、GMARCHに80名、国立が16名、ここまでで148名、その他私立の四年制大学の合格を合わせると実に404名に上る。卒業生数が133名であることを考えると、その実績の素晴らしさには目を見張るものがある。

この背景にあるものは、所謂先取り授業や予備校なみの進学のための受験対策授業であろうか。そうではないことは同校の入試問題を見れば明らかである。

今回取り上げた問題は今春の第2回試験からのものだが、全編鉄道をテーマに構成されている。社会科の専門家でなく、鉄道に興味のない者から見ると、鉄道ひとつでこんなにも多くの問題が作れるものかと妙に感心させられる。しかし、少し考えてみれば、鉄道の発展とともに、地域、都市、国の発展があり、物流、文化の交流、技術の開発、経済の発達、様々な利権の発生等、鉄道の歴史と世の中の流れの相関は明らかだ。ここでも、地場産業から二酸化炭素の排出量、鉄道の短所、2000年前の日本の様子、16世紀の日本とヨーロッパの交流、世界地理、線路や蒸気機関の構造、外国為替、東京の路線図、満州事変等、実に多岐に渡った設問が作られている。そのすべてはここに掲載した900字程の文章から導かれているが、総数10ページ、21の設問すべてを掲載できないので、興味のある方は同校のサイトを訪問してみることをお勧めする。

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さて、広範な設問の中から問14の②を見てみよう。ここで取り上げられているのは鉄道唱歌だ。なんとなく見聞きした覚えがあり、メロディも浮かんではくるのだが、習った覚えもしっかりと歌った覚えもない。調べてみると1900年5月10日に第1集東海道篇が作られ、同年11月までに全5集、334番まで編まれたということだ。改めて歌詞を眺めてみると、鉄道の沿線に地理と歴史が編みこまれ、教材としての完成度の高さに感嘆する。

鉄道というひとつの素材から、これだけ話題を広げ、課題を掘り起こしていく姿勢は、きっとそのまま授業に反映されているに違いあるまい。様々な項目を覚えこまなければならない暗記科目と捉えられがちな社会科という科目において、生徒の興味、関心を掘り起こし、自ら学び進む姿勢を生徒の中に育んでいくために幾多の工夫がなされているのだろうということが、入試問題から垣間見られる。こうした生徒や教科への姿勢が光塩女子学院の冒頭の合格実績を生み出しているのだろう。

 

 

【初出:NettyLandかわら版9月号】
(藤崎 正彦)

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19歳の銅メダル 北京オリンピック女子柔道で中村美里選手が第3位に!

平和の祭典といわれるオリンピック。今年の夏の北京オリンピックでは「世界記録ラッシュ」ともいわれたハイレベルな戦いのなかで、世界各国のトップアスリートが、期待どおりの熱戦を各競技で見せてくれた。

中学受験に関わる私たちには、水泳男子平泳ぎ100メートル、200メートルで圧倒的な強さで二連覇を達成し、400メートルメドレーリレーでも銅メダルを獲得した、本郷高(東京・豊島区)出身の北島康介選手の大活躍と同様に、女子柔道52キロ級で、渋谷教育学園渋谷高(東京・渋谷区)出身でまだ19歳の中村美里選手が銅メダルを手にしたことが嬉しかった

中村美里選手は、2003年に中学2年生にして全国中学校大会で優勝。その年のアジアジュニア選手権でも優勝し、将来を嘱望された。2005年、渋谷教育学園渋谷高校に入学した彼女は、講道館杯で優勝。同じ年の福岡国際女子柔道では、谷亮子以来の16歳での覇者となる快挙を達成。一躍「ポスト谷」の有力候補として注目を浴びた

しかしその後、国際大会、国内大会を含めて苦しい時期を過ごしてきた。

そして2007年の11月に52キロ級に変更。減量の苦しみから解放されたその年から、中村選手の快進撃が始まった。講道館杯、12月の嘉納杯東京国際と連勝。オリンピックの最終選考となる2008年4月の全日本選抜体重別選手権女子52キロ級でも優勝し、北京への代表に選出された。

北京オリンピックでは、2回戦、3回戦を突破。準決勝では惜しくもポイント差で敗れたが、3位決定戦では金京玉(韓国)に一本勝ち。みごと銅メダルを獲得して、平成生まれの日本人としては初のメダリストとなった。

それでも、試合後に悔しさを表情ににじませ、直後のインタビューでも「金メダル以外は同じ」と発言して、世界一をめざしてきた悔しさを隠そうとしなかった中村選手。しかし、表彰台に上る時には表情も和み、銅メダルを手に嬉しそうな笑みをみせてくれた。

その夜のテレビのインタビューでも、「試合が終わって、いま何をしたいですか?」というキャスターの問いに、「友だちと遊んだりしたい」と答えていたその笑顔は19歳という年相応の可愛らしいものだった。

今回の北京オリンピックでは全体に苦しい結果だった日本柔道。しかし、まだ19歳の中村選手が、次の大会への希望を感じさせてくれた。

この春、卒業したばかりの渋谷教育学園渋谷高の同級生や関係者も、中村選手の活躍に声援を送っていたことだろう。スポーツで世界の頂点をめざし、連戦で国際大会に挑んできた中村選手に、良い意味で刺激を受けてきた同級生や後輩も多いに違いない。

また、スポーツを通じて国際交流の架け橋となり、今夏の“平和の祭典”で、新鮮な感動を人々に与えてくれた彼女の活躍は、国際化教育に力を入れる渋谷教育学園渋谷の生徒や教員にとっても、大きな励みになるものだろう。

その中村美里選手は、まだ19歳。柔道関係者には「まだまだ伸びしろがある」と評される彼女だけに、次回ロンドン大会での活躍が楽しみだ。今回の銅メダル獲得を讃えるとともに、今後の活躍に声援を贈りたい。

【初出:NettyLandかわら版2008年9月号】
(北 一成)

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試合直後には金メダルを逃した悔しさを隠さなかったが、表彰式では笑顔を見せてくれた中村美里選手(写真はNHK総合TVオリンピック中継より)

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2008年8月27日 (水)

入試問題から学校を探る 理科の問題にみる宝仙理数インターの教育理念

理数インターという名称は「理数的な素養を重視し、21世紀のグローバルスタンダードとなる教育を提供する」という、同校の教育方針に由来する。

PISAをはじめ、様々な調査報告において、日本の子どもたちの理数科目の学力の低下に懸念が表されているが、ここに正面から向き合い、もっとも大切な力として育て上げようという壮大なる挑戦だ。

では、理数的な素養とは何だろうか。もちろんそれは数学や理科の得意な子を育てますという単純なことではない。物事を論理的に考え、本質を見抜いていく力を養うことであり、自分の持てる知識を駆使し、自分自身の頭で粘り強く試行錯誤を重ねていくことで問題を解決していくという科学的で高度な思考力を養成しようということだ。

P12 そんな視点で同校のすべての入試問題を眺めてみて、目に止まったのが別掲の問題だ。これは第3回午前入試のものだが、まず地球の誕生に関しての文章から始まる。この素材からして、「あぁ、そうなんだ」「この文章の前後がもっと読んでみたい」といった知的好奇心が刺激された受験生は多かったのではないだろうか。教え手としては生徒にいかに興味を持たせるか、ということも大きな命題のひとつであり、そういう意味では素材選びも大きな位置を占めるものだ。ここで大事なことは、初めて出会う入試問題にも、こうした配慮がなされているということであり、それはとりもなおさず授業でも実践されている証にほかならないだろうということだ

設問に目を移すと、問1から問3までは分類上はいわゆる知識問題であるが、仮にまったく知識を持ち合わせていなかったとしても文章から推測し、自分の頭で考えだすことも可能であり、ここにこそ同校の教育方針が見え隠れする。例えば問3は、「ゲンブ岩とはこういう色で、こんな性質を持っているもの」という物事や事象とその意味といった一対一対応の知識として持っているだけでも、もちろん対応できるのだが、選択肢を読むと様々に考えを広げていくことも可能なつくりとなっているのだ。「ゲンブ岩→火山岩→溶岩が急に冷やされたもの→そうすると、つぶは荒い?細かい?⇔大きなつぶは結晶?⇔結晶を作るには時間がかかる⇔食塩の結晶を作る時はどうだった?」等々、知識や経験を縦横無尽に結びつけたり、活用していくことで課題を解決していくことは充分可能であり、こうした力を養っていくことが高度な思考力を育てていくであろうことは疑うべくもない。



【初出:NettyLandかわら版2008年8月号】
(藤崎 正彦)

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高校生の夏の祭典 バスケットでは京北、世田谷学園、東京成徳大などがインターハイ出場

今年の夏は、8月8日から24日まで、北京で第29回の夏季オリンピックが開催される。ぎりぎりまで自らの技術と体力を鍛えぬいた世界各国のトップアスリートが、酷暑のなかでも全力を発揮し、見ごたえのある成果を見せてくれることだろう。そこには、4年に一度のスポーツの祭典ならではの“熱いドラマ”が生まれる。

そんな真夏のスポーツの祭典とほぼ時期を同じくして、7月~8月にかけては、国内でも高校生や中学生による“熱い闘い”が繰り広げられる。

7月28日(月)~8月20日(水)にかけては、平成20年度の「全国高校総合体育大会(インターハイ)」が、今年は埼玉で開催される。各競技で各地(ブロック)の代表校・代表選手として選ばれた高校生が一堂に集い、技術と体力、チーム力を競い合う

たとえばサッカーでは、前号で経過をお伝えした東京都予選の結果、6月22日の決勝戦を制して優勝した国学院大学久我山と、準優勝の国士舘の2校が東京から代表校として出場する。

同じ6月末に東京都予選の決勝リーグが行われたバスケットボールでは、下の表のようにベスト8が決まり、私立中高一貫校としては、男子の京北と世田谷学園が、女子の東京成徳大学、明星学園、実践学園が東京都代表校としてインターハイ出場を決めた。

同じバスケットの首都圏の代表校を見ると、神奈川からは男子の桐光学園が、千葉からは女子の昭和学院、千葉国際が、埼玉からは女子の埼玉栄が、各県の代表校として出場。他にも、京都からは男子の洛南、兵庫からは男子の関西学院、奈良からは男子の東大寺学園が代表校として出場する。

こうした高いレベルの“全国決戦”に、中高一貫の著名な私立進学校も名を連ねていることに注目したい。東京の国学院大学久我山や世田谷学園、神奈川の桐光学園、京都の洛南などは、野球も含めた数々のスポーツで、全国レベルの活躍を見せてきた、“文武両道”の進学校といえるだろう。

確かに、こういった全国レベルのチームの中心として活躍するレギュラーメンバーには、高校からスポーツ推薦などで入学してきた選手が多い。しかし、なかには中学から6年間、がんばり続けてチームの要となっている選手も決して少なくない。

そして、こういう高い目標を持ってスポーツに励む仲間が同じ学校に在籍することが、難関大学への進学に向けて努力する生徒にも、良い意味での刺激や励みになるという。



【初出:NettyLandかわら版2008年8月号】
(北 一成)

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Basket016月21日に駒沢体育館で行われた決勝リーグでの京北vs東海大菅生と、





Basuket025~8位順位決定戦での早稲田高等学院vs都立・駒場の一戦。インターハイ出場をかけての熱戦は、いずれ劣らぬハイレベルの戦いだった。







バスケットボール2008全国高校総体(インターハイ)東京都予選 最終結果 ベスト8Best8

※上位3校がインターハイ出場

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2008年8月13日 (水)

募集活動の新たな試み 2008市川・松戸 女子中学校見学バスツアー

中学受験を考えている子ども達や保護者にとって、学校選択はとても重要です。そんな学校選びをサポートする1つの機会が学校説明会です。

今回は中学入試が盛り上がってきている千葉エリアの女子校『国府台女子学院』『聖徳大学附属中学校』『和洋国府台女子中学校』の3校合同学校説明会を紹介しましょう。

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2009年の入試を見据えた学校説明会が多く実施されている中で、この3校合同学校説明会は異彩を放っています。

この合同説明会は4年前の開始から参加者が増加の一途を辿っています。

それはこの3校が隣接していること、学校同士の結びつきが強いこと、3校全ての学校が「女子校」であること、そして何より「ツアー」であることが他の合同説明会と一線を画していることにあります。

今や千葉では女子校はこの3校のみとなっており、女子校を志願している子ども達や保護者にとっては、学校を選択するにあたり絶好の機会なのです。

学校見学バスツアーの流れ

国府台女子学院に集合するところからバスツアーは始まります。学校間の移動は全てバスで行われ、バスは和洋国府台女子中学校の専用バスであることも面白く、このあたりにも学校間の結びつきの強さが伺えます。バスに乗っている時間は少ないながらも、ちょっとしたバス旅行に出かけているような錯覚さえ覚えてしまいます。なぜなら、バスの中では次に立ち寄る学校の先生方が、さながらバスガイドのように地理や学校の説明をしてくれるからです。またその案内が非常に上手いので驚いてしまいます。2番目の訪問校である聖徳大学附属中学校では、実際に生徒が摂っている給食を頂くので食堂の雰囲気や食事の内容も見ることができるのが素晴らしい。昼食後、バスに乗り和洋国府台女子中学校へ向かい、同様に説明・見学が実施され14:30頃に解散となります。

バスツアー終了後、和洋国府台女子中学校から駅までのバスも用意され、帰りの交通についても気にする必要がありません。

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個々の学校の特色ある説明

各校ではそれぞれ特色ある説明が行われていました。

国府台女子学院では、校風から伺える厳かな雰囲気の中で説明が始まり、平田史郎学院長先生自ら学校の説明を繰り広げられていました。女子校であることの有為性や中高一貫教育について、また子どもと学校の相性についてなど、学校選びに欠かせないポイントを突いたもので、参加者の方々も熱心に耳を傾けて話を聴いていたようです。授業の様子を見ても、子ども達が和気藹々としており、普段から活発な授業が行われている様子が伺えます。

聖徳大学附属中学校では、川並芳純校長の挨拶の後、全国でも上位の吹奏楽部による演奏と合唱を披露するなど、華やかなスタートとなりました。また、生徒による案内や食事の配膳など、実際に通う生徒と触れ合うことも多く、一部の参加者の方は生徒に直接学校のことについて聴いている風景も見られました。パワーポイントを使用した説明もテンポ良く、参加者の印象に残ったことでしょう。

和洋国府台女子中学校では、高橋邦昌校長により、女子教育や防犯対策、女性の役割についてなど、女子校ならではの女性にまつわる話が多く展開されました。学校の雰囲気もアットホームで、授業見学では「アジの解剖」をしている理科の実験風景や、ミシンで洋裁をしている風景も見ることができました。体験・発見を通して学ぶという学校のテーマがよく感じ取れるものでした。

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「新たな募集活動」への反応

参加者は200名を超え、定員の上限に達したほどの見学バスツアー。夫婦で参加している方も多く見られました。募集当日に応募締切となってしまうほどの人気で、千葉エリアの受験が盛り上がっていることも納得できます。また企画内容も「ツアー」という色が強く、通常の合同説明会よりも新鮮味溢れ、参加者は充実した時間を過ごすことができたのではないでしょうか。

全ての説明会場で感じ取れたことでありますが、参加者が笑顔であるということが最も印象に残っています。学校説明会というと堅苦しいイメージがあり、難しい顔をしている参加者が多いように思いますが、この見学バスツアーではそのような参加者の顔を見ることはなく、むしろ笑顔で終始執り行われていました。明らかに競合する環境の3校であるにも関わらず、競合するのではなく協調することによって参加者が増し、そして比較されることでお互いの個性が更に色濃くなり、その独自性が参加者に伝わり、結果としてこのような協調活動が3校全てのPRにつながっていたのでしょう。全国的に見ると、ここまで協調した合同説明会はまだ少ないが、こうした取り組みは今後ますます増えていくことを期待するとともに、受験生や保護者にとっても有益な機会になると思います。

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2008年7月22日 (火)

入試問題から学校を探る 算数の問題にみる武蔵の教育理念

P11武蔵の入試問題は解く楽しさに満ちている。とりわけ数論の問題は秀逸である。作問経験者としては、良く毎年考えつくものだと感心させられる。数の性質を知り尽くしている方々が多いのだろうということと、数学を学んでいくうえで礎となる数論に力を入れているのだろうということが容易に想像される。さらに同校の入試問題には学校の教育理念がしっかりと背景に流れており、学校が求める生徒像が反映されている。それは「自ら調べ自ら考える力ある人物」である。

今回取り上げた問題ももちろん数論である。(1)は用意したお菓子の個数とみかんの個数の和は一定であることに気づけば、比をそろえて比の差と余りの個数の差に注目することでお菓子の個数は145個とすぐに求められる。武蔵受験生であれば難なく解ける問題だ。面白く、武蔵らしいと感じるのは(2)だ。考えていく道筋はいくつかありそうだが、ここでは実際に参加チーム数が予定の参加チーム数の6割増しであったということから、予定の参加チーム数と実際の参加チーム数の比が5:8であることに注目し、(1)で求めたお菓子の個数を利用することにしよう。配る予定だったお菓子は余りの5個を除くと140個であり、実際に配ったお菓子の個数は余りの1個を除くと144個である。チーム数は整数であるから、140と144をそれぞれ2数の積(例えば140=7×20など)に分解するとチーム数の比が5:8となる組み合わせが2つ見つかるだろう。問題の解説が目的ではないので、これ以上の記述は避けることにするが、解きながら「面白いなぁ」と思わずにはいられない問題なので、興味のある方は是非一度挑戦してみて欲しい。難しいわけではなく、奇抜な発想が必要なわけでもないのだが、数の性質の持つ醍醐味を味わえる問題だからだ。

この問題ひとつをとってみてもわかるように、様々な問題に対して興味、関心を持って主体的に取り組み、課題を解決していく過程の中にある楽しさを身につける教育が実践されていることは間違いのないことであろう。

中高の6年間や大学受験といった目先のことに止まらない、生涯にわたる知的探求の基礎を培う教育が展開されていることは疑うべくもない。




【初出:NettyLandかわら版7月号】
(藤崎 正彦)

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