金融・経済教育と司法教育
◆2005年は経済教育元年だった。以来、世の中のニュースは、TOB(株式公開買い付け)やM&A現象で溢れている。携帯電話や様々な金融カードで決済ができる状況で、子どもも簡単に巻き込まれる。そこで最初は経済モラルを指導するために経済教育は始まった。
※参照→国際教育情報室室長岡部憲治のサイト
◆今度は2009年までに始まる予定の裁判員制度に先駆けて、司法教育が注目を浴びているという(日本経済新聞2006年24日夕刊による)。模擬裁判を通して社会モラルや人権を学ぶことがねらいらしい。
◆しかしながら、多くの私立学校では、すでに総合的な学習の時間や社会科の中で、金融や司法の教育プログラムを導入している。たとえば、金融教育で有名なのは品川女子学院。また京北白山高校では、日経ストックリーグで、アメリカ的な実践的なプログラムを導入し、高校生が大学生相手に数々の勝利を収めている。
◆司法教育では、渋谷教育学園幕張や立命館宇治高校の模擬裁判のプログラムが有名だし、たいていの私学では社会科の授業の一環としてどこかに組み込んでいるだろう。
◆したがって、今さら金融教育や司法教育といっても私学にとっては当たり前ではある。しかしながら、現状では金融経済モラルや人権や社会モラルの側面が強調されているが、この先は金融教育と司法教育の融合が行われるはずだ。
◆扱われる問題が刑事事件や人権問題ではなく、商取引、つまり民法や商法などの民事法や知的財産権などの領域の問題が扱われるようになると、この両者の教育の融合は一挙に加速するだろう。
◆ここにきてようやくグローバルな領域につながる。そして、これは私学でしかできないことだ。法と経済と正義の葛藤。どこの私学が始めるのだろうか。そう思って麻布の「論集’05」を開いてみたら、すでに社会科の修論として「自由主義政治思想の歴史的展開と現代自由主義」というテーマで高1生が書き上げていた。題目からは政治の話では?と思うかもしれないが、資本主義に包含されていく所有の交換システムを古代ギリシア、中世、啓蒙期、近代と歴史的に検証していき、最終的にはロールズ、ドゥーキン、ノージックという現代の金融商品の商取引の自由を正当化する多様な論を発見している。
◆金融経済とそれを正当化する司法システムの危うさを見抜いている点で、ファイナンシャル・アナリスト達を乗り越えている。それにしても、ヨーロッパ中世のドミニコ会の修道士であり神学者でもあるトマス・アクイナスの公正価格論(シュンペーターやロールズにも影響を与えているだろう)まで検討しているとは!脱帽である。(本間 勇人)
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