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2006年12月 4日 (月)

私学の教育理念の意義

私学は「ゆるやかな理念共同体」である。独自の建学の精神に基づいて動いているが、国の教育や行政が偏った1つの方向に進まないようにチェックできるリーダーの輩出という点で連帯している。

高橋是清といえば、歴史的偉大な人物。内閣総理大臣に就任したり、蔵相、日銀総裁の重責を果たしたりし、1927年の金融恐慌の沈静化も果たした人物として政財界では超有名。

ただし1878年、創立者佐野鼎の意志を継いで開成の初代校長に就任していたことは意外にも一般には知られていない。高橋是清は校則第一条に今の開成にも継承されている目的を明快に定めた。

第1条
本校ハ専ラ他日東京大学予備門ニ入ラント欲スル者ノ為メニ必用ナル学科ヲ教授スル所トス

翌年79年、予備門合格者は112名(定員466)。時に高橋是清は26歳であったが、当時は東京大学予備門に進学することは、日本という国の形をつくるリーダーになるということであ高橋是り、社会に貢献することを意味した。この理念は高橋是清の生きざまそのものだったのではないだろうか。インフレ抑制政策によって国民の生活を守ろうと軍事予算縮小案を提出したとき、二・二六事件で殺害された。

私立と官立を往復して仕事を遂行した高橋是清にとって、明治国家づくりとその国民の社会生活を守ることが重大な使命だったのだろう。もし国家のための官僚と国民のための官僚と二通りあるとするならば、今も開成の理念の伝統は後者である。

今では開成という私立学校は、このような理念を身に染み渡らせた人材を3万人以上輩出している。私学全体で考えればすでに1000万人は輩出されているのではないだろうか。独自の理念を有した私学1校1校のサイズはそれ程大きくはないが、自主独立と社会への貢献という私学の共通理念は着実に社会の基盤となっている。

自分の拠り所を明確に描けないまま社会で壁にぶつかっている青少年が増えているといわれて久しい。その一方で、自分の拠り所を学校の理念に支えられながら発見して、社会に貢献していく人材が私学から輩出されているのも事実だ。

このような人材の「ゆるやかな理念共同体」の広がりが少子高齢化の日本社会で、結果的に加速する。私学の教育理念の広がりは、豊かな社会の再生の鍵になるかもしれない。

【開成卒業生一斑】(昭和2年ごろまで)尾崎行雄(政治家)、長岡半太郎(物理学者)、穂積八束(法学者)、黒田清隆(画家)、松方幸次郎(松方コレクション)、秋山真之(日本海海戦参謀)、正岡子規(俳人)、南方熊楠(民俗学)、島崎藤村(作家)、柳田国男(民俗学)、斎藤茂吉(歌人)、浅野総一郎(浅野セメント社長)、末弘厳太郎(法学)、戸坂潤(哲学)、町村金五(政治家)、田中美知太郎(哲学)、和達清夫(物理学)、橋本龍伍(政治家)。

【参考文献】 開成小誌(昭和63年学校法人開成学園発行)

[初出:NettyLandかわら版10月号]
(本間勇人)

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