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2007年3月18日 (日)

女子学院の教育力(2)

★前回の女子学院の教育力のつづき。女子学院(以降JG)のサイトに掲載されているJGニュースには興味深い記事がたくさん載っているが、「パイプオルガン発表会」のニュースには驚愕。

★2月16日(金)の昼休みにパイプオルガン演習(自由選択科目)を受講している高2の生徒2人によるパイプオルガン発表会が行われたという。そして2人による感想を読むことができる。ぜひご覧頂きたい。

★Aさんは「講堂のパイプオルガンに一度は触っておこうとこの授業を選択したのが一年前。今まで楽器を習ってきてはいても音楽的知識の乏しい私には、楽譜の解説書も半ば暗号文でした。ただその中に時に自分にも分かる表現を見つけて、それをどうオルガンで表現しようかと・・・」と述べている。

★パイプオルガンの存在とその開放がJGの教育力の高さを物語っている。まずパイプオルガンというあのモーツァルトも楽器の王様だと感嘆した楽器があるということがすごい。桜蔭でも公立中高一貫校でもパイプオルガンはないだろう。

★またキリスト教主義の学校はパイプオルガンを設置していたとしても、生徒に開放していないところも多いはず。生徒に演奏のチャンスを作るというのがJGの教育力の奥行きの深さなのである。だから生徒が自主的に「講堂のパイプオルガンに一度は触っておこうと」いう意志を持つのである。

★そのうえで、「音楽的知識の乏しい私には、楽譜の解説書も半ば暗号文でした。ただその中に時に自分にも分かる表現を見つけて・・・」という探究が始まるが、「暗号文」というレトリックで、探究の深遠さが伝わってくるし、探究の構えが想像できる。そしてそれはパイプオルガンの演奏の探究であると同時に、自分探しにもつながっている。ここは、JGの教育の根源。

★Bさんは「・・・オルガンを弾いていると、オルガン的発想のようなものを得る事が出来て、視野が広がった気がします」と述べているが、「オルガン的発想」というのは何だろう。Bさんは確かに何かを発見し、視野を広げたのだ。自分の殻を「オルガン的発想」で破ったのである。このシーンはヘルマン・ヘッセの「デミアン」に登場するものに通じる何かだ。アプラクサスの卵の殻を破る着想に。第一次世界大戦の予感と近代社会の矛盾とその中で自分を探す物語・・・。

★自由の真理を追究するJGのリベラルアーツは本物だ。これに対し日本の旧制高校の教養主義は、日本の国家を支える学問の準備である。リベラルアーツとはまた違う味がある。桜蔭は、リベラルアーツを有しているのかどうか、もし有しているとしたらそれはJGと同じようなリベラルアーツなのか、それとも教養主義なのか、それを明確に説明する責任はある。

★それをうちは特別なことは何もしていませんというようなトーンで栄誉ある孤高を守っているような態度をとるようなことがあれば問題である。子どもたちを東大にいれるとかいれないとか、医学部に進めるとか進めないとかという前に、世界的見地に立った教育のフレームワークなのか、日本国家的見地に立った教育のフレームワークなのかはっきりさせなければ、学校選択者は進路を決める時に、最終的決断ができないからだ。

★科学的中立主義や客観主義は、結局世界の普遍的価値に興味がないということといっしょなのだ。私立学校の教育はそこをはっきりさせねばならないはずだ。忍びよる右傾化に対する危機意識があるかないか。世界の子ども達の貧困を問題として捉えることができるかどうかは、その意識の高さにかかっている。

★自分の子どもだけは何とかしたいという学校選択者は危機意識の低い科学的中立主義の学校を選ぶだろう。しかし、それは世界の子ども達を救えない。そしてその負のツケが巡ってくるのは、孫の世代。≪私学の系譜≫の保守本流は、そこまでのビジョンを考える。桜蔭が≪私学の系譜≫の保守本流かそうでないかは、今のところ私には判断がつかないが、私学的経営をしているが、≪官学の系譜≫の中に入る学校もある。そこは見極めたい。

★東大は東大だから≪官学の系譜≫だと言っているつもりはない。戦前の東大は≪官学の系譜≫を作ってきたが、戦後すぐに南原繁が東大総長に就任したときは、≪私学の系譜≫に路線を変えているはずだ。もちろん今そうであるかどうかは議論もあるだろうが・・・。国立大学の独法化以降、もっと明確に≪私学の系譜≫であることが表現されるとよいのだが、なかなか難しいところか。

★しかし、それが明らかになれば桜蔭が自ら存在証明をしなくても≪私学の系譜≫の保守本流であるかどうかということもまた推測がつくのだが。JGと桜蔭。御三家であるかどうかより、日本の教育の原点を見極める重要な教育場である。(本間 勇人)

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