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2007年4月11日 (水)

時代はクリエイティブ・クラス

★ジョージ・メイソン大学 教授リチャード・フロリダは、著書“The Rise of The Creative Class(2002)”、“The Flight of The Creative Class (2005)”で、多くの先進国では、クリエイティブ・クラスと呼ばれる全く新しいタイプの労働者(新しいアイデアや技術、コンテンツの創造によって、経済を活性化・成長させる役割を担う)が、労働力人口の約30%を占めると推計。国境を越えて自分の住みたい都市を選び、移動していくため、都市はクリエイティブ・クラスを引き寄せるデザインをし、企業はクリエイティブ・クラスが集まる工夫と場所を選択する人材マーケティングを重視していくようになる。時代はクリエイティブ・クラスなのである。

★NTS教育研究所の岡部憲治と両著を読んで、私たちは、これはクリエイティブ・ピープル育成とクリエイティブ・クラス創出は全く次元の違うものだと認識した。リチャード・フロリダ自身、日本には創造的人材は他の先進国よりたくさんいるのだが、クラスは形成していない。それぞれの産業構造に埋もれていて、本来的な創造性をグローバルに発揮していないと指摘している。

★私たちは、私立中高一貫校のクリエイティブ・ピープル輩出の教育の質を見てきたが、≪私学の系譜≫からいけば、man for othersとしての個人であるから、個として優秀な人材を輩出するだけではなく、社会や世界を変える影響力ある新しいクラスを形成する人材を輩出できるはずであると考えた。

★そこでクリエイティブ・クラスを形成する人材を輩出する≪未来を創る学校≫を探す企画を立て、実行し、今に到っている。

★2004年には、まだクリエイティブ・クラスという明確な輪郭はなかったものの、「首都圏私立中高一貫校の選び方~未来を創る学校」というテキストを書き上げた。

★そして2005年には、日・EU市民交流年イベントとして「≪未来を創る学校≫セミナー」を年3回開催した。そして3回目の各学校(那須高原海城・白梅学園清修・八雲学園・洗足学園)の先生方とは、クリエイティブ・クラスを形成するリーダーをどう育てるかをベースにパネル・ディスカッションをした。

★当時はリチャード・フロリダの訳本がまだなかったので、クリエイティブ・クラスというキーワードは世に流布されていず、共有するのには、パネルをやる前に先生方とNTS教育研究所のスタッフは時間をかけて打ち合わせをした。

ホンマノオトでクリエイティブ・クラスについて少し書き始めたのもそのころであった。岡部の方は、≪未来を創るセミナー≫で実際講演もし、その後、本人自身のサイト“Real Voice”で、6回に渡って 「都市再生から都市創造へ」という論文を書いている。

★その後、日経新聞でリチャード・フロリダが取り上げられ(これについてはホンマノオト参照)、この流れがやっと日本にも認識されるときが近いと確信し、Netty Landのフリーペーパー「かわら版」でも、クリエイティブ・クラスを形成する人材を輩出する学校を、クリエイティブ・スクールとして紹介する編集をしていった。本ブログでも昨年の12月に「女子美大付属と国立音大附属」についてクリエイティブ・クラスという観点で書く試みをした。

★そして「かわら版2007年1月号」では、特集「クリエイティブ・スクール」を企画編集した。135校が「未来を創るクリエイティブ・スクール」としてメッセージを贈ってくれた。「時代はクリエイティブ・スクール」という記事の冒頭で私はこう書いた。

21世紀をリードする人材は、多様な才能(Talent)を持ち、その才能を実現できる技術(Technology)を磨き、他者の痛みを受け入れ、信頼を作る(Tolerance)ビジョンを創っていける3Tが必要だと言われています。ある社会学者はこのような価値観や活動力を持っている人材グループをクリエイティブ・クラスと呼んでいます。

★このある社会学者こそリチャード・フロリダである。そしてこの3Tという視点で、NTS教育研究所の吉井千花と岡部憲治が学校を取材し記事を編集した。

★この企画に関して岡部と私は、「週刊ダイヤモンド別冊 2007年3月27号 いま、試される父親力」の編集者に取材され、7ページに渡って取り上げられている。もちろん、リチャード・フロリダの件についてもきちんと扱われている。

★しかしながら、一般に日本においては、まだまだクリエイティブ・クラスについては関心が広まっていない。創造性ということに関しては当たり前のように語られるのであるが、それがクラスという概念で捉えられていない。というのもこの概念が広まると、産業構造に大きな変化が現れるからである。と少し気弱になっていたのだが、やはり、経済界は、フラット化に壁を作るようなことはしなかった。

★今月、ダイヤモンド社は、“The Flight of The Creative Class (2005)”の翻訳を「クリエイティブ・クラスの世紀 」(訳者井口 典夫) という題で発刊。 また同時発売の“Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2007年 05月号”で、「クリエイティブ資本主義」という特集を組み、リチャード・フロリダが前面に出てくる。また、“The Rise of The Creative Class(2002)”の翻訳も秋に出る予定だという。

★リチャード・フロリダがクリエイティブ・クラスという新しい考え方を世界に発信してから5年が経過して、やっと日本でも広がる可能性がでてきた。やはりグローバルな考え方に関しては、日本は相当遅れていると考えたほうがよさそうだ。それが教育というフィールドになるともっと遅れているだろう。文部科学省の教育行政・政策が時代錯誤に見えるのもそういうわけだったのである。

★しかし、それであきらめるわけにはいかない。だから私立中高一貫校に期待がかかる。時代はクリエイティブ・クラス、そしてクリエイティブ・スクールなのである。(本間 勇人)

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