★渋谷幕張のパンフレットから見えるコト(2)のつづき。6年間の主要5教科のカリキュラムがバーンと載っている。高校1年で、中等教育課程の学習指導要領はほぼ終わる。一部の教科だけではないところが、徹底した先取り学習だ。
★大学合格実績も輝かしいのは言うまでもない。学校行事では、さりげなく大江健三郎氏の講演会・読書指導の一コマが載っている。交換留学のチャンスも多いし、ホームステイ先もニュージーランド、イギリス、シンガポール、アメリカと多方面だ。
★施設の説明も簡にして要を得ている。
<「何このスペースは?」というところがたくさんあります。あえてもうけられたフリースペース・・・それは多くの個性が育つところなのです。>と。
★施設はたんなる箱ではない。人間形成のための教育空間であると認識をしているよというアピールも忘れていないのだ。
★中学入試Q&Aの中にはこういうのがある。「学習塾に通う必要はありませんか?」に対し、
<ありません。特に中学一・二年時は基礎的な学力や学習習慣を身につけるために宿題がたくさん出されますから、学習塾に通う時間はないでしょう。>
★ときっぱり。この気概がいい印象を与えることは間違いなし。それから高校入試(募集枠30人)のページが1ページあるが、これは中学受験生にとってもアピール力がある。渋谷幕張の高校入試のネーミングがよいのだ。TAG入試と呼ばれている。TAGは、Talented And Gifted studentsの略。神さまから贈られた才能を持った受験生のための入試だよというメッセージだろう。TAGクラスは、アメリカの学校も州によってはおなじみの考え方。田村校長先生らしい着想である。
★がしかし、何といっても凄いのは、シラバスの例。≪数学Ⅱ≫のほんの一部のシラバスの表が載せられているだけだが、これを見て、学びのグローバリゼーションが各教科にしっかり、みっちり浸透しているということがわかる。
★この発想はIB(国際バカロレア)やユネスコのESD(Education for Sustainable Development )、OECD/PISAなどの世界標準のプログラムデザインの発想に近い。これらのプログラムはSubject GroupsとCoreという有機的なデザインをする。
★渋谷幕張のシラバスも、教科ごとに作られてはいるが、その「確認事項」の背景に明らかにCoreの学びの領域を想定していることがわかる。Coreは教科を貫く知の領域であり、Interdiscipline(学際的)としての領域である。
★公立学校に象徴されるように、日本の教育は教科という要素完結型で、教科を横断する関係主義的発想はない。つまりSubject GroupsをつなぐCoreがなく、ここは空洞になっている。専門的な科学力は見事だが、General Intelligenceは弱い。つまり麻布の氷上校長先生に言わせれば、「教養」がないということだろう。それゆえ、小宮山東大総長に、「情報を知識とし、知識を構造化することで、知識に価値を与え、そしてその主体は確信を持った個人」としての人間であって欲しいと言わしめることになるのだろう。
★多くの学校がIBの発想やリベラルアーツというキーワードを使い始めている。しかし大事なことは、それがCoreとして、あらゆる教科活動、部活動などの教育の最前線で、建学の精神や教育理念と結びついて機能していないと、絵に描いた餅にすぎないのである。渋谷幕張の最大の強みはここであり、当分同校の輝かしいポジショニングが脅かされないのは、他の学校の経営陣や現場の先生方がプログラムにおけるCore領域の重要性を受け入れるのに時間がかかるからである。
★逆にこのCore領域を現場に浸透させるべく、真剣に取り組んでいる学校は、躍進するはずである。たとえば、宝仙理数インター、かえつ有明、白梅学園清修、小野学園女子のように。
★そして実際に海城、芝、攻玉社、芝浦工大、芝浦工大柏、世田谷学園、共立女子、立教女学院、聖学院、女子聖学院、中村、頌栄、鴎友、洗足、山手学院、横浜女学院、八雲、東京女子学園、神奈川学園、聖徳学園などは、すでにその成果を大いにあげているのではないだろうか。
★俗に言う男女御三家(この言い方は好きではないが)は、されど御三家で、学びのCore領域をハビトゥス(文化資本)として有している。今はまだはっきりとは表現されていないが、横浜山手女子、横須賀学院も学びのグローバリゼーションに取り組んでいると聞き及ぶ。私立学校の教育の流れやイメージ、ポジショニングがもうすぐ大きく変わるだろう。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]