入試問題から学校を探る 算数の問題にみる吉祥女子中学校の教育理念
数多ある女子校の中で、御三家に次ぐ進学校としての地位を不動のものとしつつある吉祥女子中学校。
2008年春の現役生だけの合格実績を見ると、東大2名をはじめとして国立大学に30名、早稲田42名、慶応23名、上智17名を含めた私大への合格者は実に787名を数える。さらに、このうち医科、歯科、薬科大学へは国立、私立を合わせて34名の合格者を輩出した。当然複数合格もあるが214名の卒業生数に対しての数字であることを考えると立派というほかない。また、同校には芸術コースも設置されており、こちらも卒業生40名に対して、芸大、音大への合格者は57名だ。これらの数字だけを見ても、生徒の中にある、あらゆる可能性を引き出し、育て上げていることは否定の余地がない。
そんな同校の入試問題の中から、2月1日の算数の問題を取り上げてみた。
掲載した問題をご覧いただければ分かるとおり、何の変哲もない商と余りと約数に関する問題だ。上位校を目指してきた受験生であれば、何度となく演習してきたことであろう。ただ単に答えを出すということに関しては何の苦もない問題なのだが、ここで敢えて取り上げたのには理由がある。まずは囲みの部分を見ていただきたい。ここに書かれているのは、この問題を解くにあたっての考える手順だ。一見するとヒントのように見えるが、実は問題の構造そのものについて書かれているのだ。これを読んで、頭の中だけで理解しようとするのは少しばかり難儀なことかもしれない。実際にここに書かれた順番の通りにリンゴとミカンの絵を描いて考えてみると理解できるものと思う。③の段で言っていることは、元々同じ余りがでるのだから、ミカンの余りからリンゴの余りを取り除いて、余りの部分を確定してしまえば、残りのミカンは子どもにちょうど配れる個数になるということだ。ここで、もう一度①、②と振り返ってみると、③の作業は元々あったリンゴとミカンの総数の差をとることと同じであることが分かるだろう。ここに吉祥女子で展開されている数学の授業が垣間見られると言ったら飛躍を感じるだろうか。算数では、そのほとんどのことを具体量を用いて考え、理解していくのに対して、数学では抽象的な数の操作に歩を進めることになる。ここに数学での躓きの大きな要因があるのだが、どんな数を扱うにしろ本質の理解が不可欠であることに変わりはない。速さの三公式が理解できずに方程式は立てられないのだ。この囲みの部分には、きちんと本質を捉えさせた上で数学の世界へと誘う意識が感じられるのだ。卒業生の15%が医歯薬系に合格している現状と合わせて考えると、確固たる基礎を築いた上で柔軟な思考力を養うような授業が展開されているのだろうという推察ができるのではなかろうか。
【初出:NettyLandかわら版2008年11月号】
(藤崎 正彦)
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