国や各自治体で「防災マニュアル」の整備が進んでいるが、きめ細かい教育実践の充実までには到っていない。今後は私学独自の先進的な防災教育もモデルになるだろう。
1995年の阪神・淡路大震災後、兵庫県は、すぐに「兵庫の教育の復興に向けて」という提言を作成した。それ以来、兵庫県はもちろんのこと、各自治体でも防災マニュアルの検討や防災教育に全力を尽くしている。
しかし、その後、新潟県中越地震や福岡県西方沖地震、各地の台風による災害など予想を越える自然の猛威はすさまじく、その度に、国や各自治体は防災対策強化を講じている。
企業や市民も防災に対し関心が高く、帰宅困難な人を救う避難所を提供するなど協力体制が形作られつつある。

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しかし、ふだん多くの子どもたちは学校にいて、家族から離れた場所におり、学校の危機管理が最重要課題。
それゆえ、文部科学省や各自治体の作成する「防災マニュアル」には、学校による防災教育の項目が必須なのである。この手のマニュアルはかなり細かくできている。
たとえば、災害後、どのように生徒たちが帰宅するのか日頃から保護者と確認し、訓練までするように指摘しているほど。しかし、実際に災害が発生した場合、どの段階で生徒たちを帰宅させるのか、その判断は校長に委ねられている。
したがって、東京都教育委員会では、1995年にまとめた「学校防災マニュアル」を今年さらに見直そうとしている。が、災害はいつ起こるかわからない。転ばぬ先の杖はないものか。
その1つのモデルとして優れている体制をとっているのは笹塚にある富士見丘中学校である。同校の防災教育の卓越性は、避難訓練のような特別なイベントを指すのではない。ふだんからハード面とソフト面の教育を怠らないという意味で優れているのである。
同校の校舎はあらゆる面でエコロジカルな仕掛けが施されており、特に水についての発想は興味深い。雨水を地下貯留ピットに貯め浄化し、中水としてトイレの洗浄や植栽の散水に利用できるシステムが設置されているが、上水の確保だけではなく、この中水の確保が、災害時に大いに役に立つ。
電気も大型自家発電装置が設置されていて、上水、中水ばかりではなく、電気というライフラインも確保されている。生徒教職員が残留隔離されても、3日間は学校で安心して生活が可能。
このように生徒に何が必要かというきめ細かいハード面に対する配慮は、富士見丘の先生方の生徒を思いやる目配りから生まれている。
先生方は、生徒の小さな変化を見逃さず、電話や面談で常に情報共有をしている。生徒が何を感じ何を考えることが大切なのかは、普段から親密に接しているからこそわかるのである。
[初出:NettyLandかわら版10月号]
(本間勇人)